悪ノ人生‐ミチ− 第七話 She killed her out of jealousy.
リンアン:ri
灯世
レオン:re
加々美由亜
ミシェル:mi 朴妃斗
ハイク:ha
柏木まあさ
カイン:ka
鳴海純
モニカ:mo MIA
−緑の国・パン屋−
SE 入店ベルの音
mi01 : いらっしゃいませー。
ha01 : ミシェル、大変、新作のパンがもうなくなっちゃうわ。
mi02 : 今、モニカさんが奥で焼いてると思うけど…焼けたかな?
ha02 : 私、見てくるわ。ここ、任せても大丈夫?
mi03 : まっかせて!
ha03 : それじゃあ、お願いね。
SE 足音
mi04 : ハイク、張り切ってるなぁ…あ、当たり前か。ハイクが考えた新作だものね。
あの新作パン美味しいから私も食べたいなぁ…あ、お腹すいた…
SE パンや食器を落とす音
ka01 : あぁっ!
mi05 : だ、大丈夫ですか?!
ka02 : あ、すみません…っ!パン、乗せすぎちゃったみたいで…
mi06 : わ、すごいたくさん…
ka03 : 全部美味しそうで、迷っちゃって…本当にすみません…
mi07 : あ、良いんですよ、ぜんぜん!落ちちゃったパンたちはかわいそうですけど、褒めてもらえて多分うれしいと思うから。
ka04 : あ、パンは全部食べます!
mi08 : え、でも、落ちちゃいましたけど…
ka05 : 3秒ルール。
mi09 : え?
ka06 : 落ちたものは3秒以内に拾えば大丈夫っていう言い伝えです。
mi10 : 言い伝え…?ぷっ、あはは、どこの言い伝えですか?
ka07 : 俺の国…あ、青の国【ブルーアイランド】って言うんですけど。
mi11 : 青の国【ブルーアイランド】?
ka08 : はい。俺、その国の貿易商で…
mi12 :
貿易商!すごいわ!それじゃあ、きっとたくさんの国に行ったことがあるんでしょうね!
私、この緑の国【グリーンビレッジ】から出たことないから周りの国のことも遠い国のことも何も知らないの。
たった一度も出たことがなくって…いつかは隣の黄金国【ゴールデンランド】に行きたいとも思うのだけれど…
ね、ね、今までどんなところに行ったの?
ka09 : え、あ、え、
mi13 :
やっぱりどの国にもパンってあるのかしら?あ、遠い国には不思議な文化があるとも聞いたわ。
って、あ……ごめんなさい、私ったら…ついつい、おしゃべりで…
ka10 :
くすくす、いえ、元気なのは良いと思いますよ?それに、好奇心旺盛。
俺も好奇心が旺盛だからこの貿易商って仕事やってる部分あるし…
mi14 : あら、それじゃあ、似たもの同士、ってことですね!
ka11 : そうですね。
mi15 : あ、私、ミシェル=ファーストって言います。お名前、お伺いしても良いでしょうか?
ka12 : カイン=トレーラーと言います。
mi16 :
カインさん…あ、私のことはミシェルって呼んでください。
緑の国【グリーンビレッジ】にはいつまでいらっしゃるんですか?
ka13 : 実は、ここには先日来たばかりで…右も左も分からない状態でこのお店の前を通ったら、良い匂いがしたから、ふらっと寄ってみたんです。
mi17 : それじゃあ、色々ご不便でしょうね…
ka14 : 知り合いに案内役を頼んでたんですが、流行り病とかで倒れてしまったみたいで…
mi18 : まぁ…あ!それじゃあ、私が案内しましょうか!
ka15 : え…?あ、いや、でも、そんなご迷惑じゃ…
mi19 :
そんなことないですよ!明日、お店お休みだし…ここでこうやってお話したのも何かのご縁!
縁は大事にしなさいっておじいちゃんに言われてるんです。だから、ぜひ、案内させて!
ka16 : …あ、それじゃあ…
mi20 :
あ、そうだ、この国自慢のフルーツアイス食べました?この国は風土が豊かだから果物がたくさん出来るの。
その果物をたくさん使ったアイスがとっても人気で、
ka17 : お願いします!!
mi21 : ふふ、ええ、喜んで!!
OP
mi22 : 悪ノ人生、第7話。
ka18 : She killed her out of jealousy.
−黄金国・城−
re01 : 王女、王女……はぁ…朝食、食べないなら下げさせますよ?
ri01 : …食べるわ…
re02 : そう言って、さっきからまったく手をつけてないじゃないですか。
ri02 : …食べるわ…
re03 : …王女、職務もあるんです。決められた時間内にお食事は終えて頂かないと…
ri03 : …食べるわ…
re04 : はぁ…リンアン、隣の国に行こうか。
ri04 : …え?
re05 :
この前、隣国の大臣宛てに手紙を送った返事がきてね、この時期だったら果実もたくさんなっていて、美味しいだろうから、
いつでもお越しください、と仰ってたよ。
こっちの国の職務を今日中に終わらせて、明日にでも、行こう。
職務なら俺も手伝うから。
ri05 : 隣の国…
re06 : 貿易商の彼も今、隣国にいるはずだし。
ri06 : この前、来たとき…言ってたわね。
…会えるかしら…?
re07 :
街を少し散策しようか。
緑の国【グリーンビレッジ】の下町を見るのも良いだろうし。
ri07 : …行くわ。
SE 食器の音
re08 : それじゃあ、その旨、伝える文を隣国へすぐに出してきます、王女。
ri08 : ええ。
…レオン、…
re09 : はい?
ri09 : ありがとう…
re10 : いえ…
王女のためなら。
SE 扉の音
−緑の国・街−
ka19 : へぇ、それじゃあ、友達とパン屋さんになりたくてあのお店に?
mi23 : うん。私、パン作りにだけは自信あったし、ハイクもお料理上手だから!
ka20 : 将来は2人のお店を持つのが夢?
mi24 : もっちろん!小さくても良いの。小さくても、毎日毎日たくさんのパンを焼いて、たくさんの人に食べてもらって、たくさんの人を幸せにするのが私達の夢。
ka21 : 素敵な夢だね。
mi25 : お店が出来たら、カインさんも来てくれる?
ka22 : もちろん。
mi26 :
あのね、あのね、海の見える小さな丘でパン屋さんしたいの。
でも、この国に海は無いから、ハイクと一緒に旅したいな、って。
ka23 : それじゃあ、俺の国が一番じゃないかな?
mi27 : え?
ka24 : 俺の国は、島国だから、海に囲まれてるよ。
mi28 : 本当に?!
ka25 : それに、気候とかもこの国と似ていて、穀物は育つし…
mi29 : わぁ、素敵!一回カインさんの国に行ってみたいわ。
ka26 : じゃあ、今度は俺がミシェルを案内する番だね。
mi30 : ふふ、そうね。案内してくれる?
ka27 : もちろん。俺の国にもたくさん美味しいものがあるし、変わった文化もあるから、全部教えるよ。
mi31 :
ありがとう!
カインさんの国でお店、開いたら毎日買いにきてくれる?
ka28 : 貿易で外の国に行っていない限りは毎日買いに行っちゃうかもなぁ…君たちのパン、美味しいし。
mi32 : えへへ、それじゃあ、毎日会えるね!
ka29 : あ、っ…う、うん、そうだね…!
mi33 :
カインさん、顔、真っ赤よ?リンゴみたーい…あ!リンゴで思い出した!
私、果物買わなきゃいけないんだった!
ka30 : あ、そ、それじゃあ、行っておいで。俺は少しこの辺のお店見ておきたいし。
mi34 : うん!ちょっと行ってくるわ!すぐに戻ってくるわね!
SE 足音
ka31 : あんな素直に笑う子…びっくり、した…可愛すぎるだろぉ…(一気に身体の力が抜けたように)
−緑の国・馬車の中−
re11 : それじゃあ、王女、この馬車の中で少し待っていてください。
ri10 : どこに行くの?
re12 :
買い出しです。どこかの王女が毎日毎日飽きもせずリンゴを使ったお菓子を所望するから、大量にこっちで買い込んでおくんです。
それじゃあ、ガクトさん、王女の護衛を…あ……いや、王女、行ってきます。
ri11 : …ええ。
−緑の国・街−
mi35 :
よし、これで私の新作パンが作れるわ!果物たくさん使って美味しいパン焼かなきゃ…
カインさん、美味しいって言ってくれるかなぁ…
よ、いしょ、っと…少し買いすぎちゃったかしら…
SE 人にぶつかる音
mi36 : あっ!!
SE 果物が落ちる音
re13 : あ、失礼しました!
mi37 : あ、いえ、こちらこそ、ちょっと前が見えなくて…!
〜〜〜〜〜〜
ジングル
〜〜〜〜〜〜
re14 : これで全部ですか?
mi38 : はい、ごめんなさい、拾ってもらっちゃって…
re15 :
いえ、ぶつかったのはこちらですし。
それにしてもたくさんの果物ですね…
mi39 :
ええ、ついつい買いすぎちゃって…
あ、そういえば、どちらのお国から?
re16 : え?
mi40 : だって、髪の色…この国の人間は緑だから。
re17 : あ、そっか…俺、黄色いから…
mi41 : ええ、とっても綺麗ね!
re18 : え、綺麗…?
mi42 : キラキラしてて、太陽みたい!
re19 : あ、ありがと、ございます…
mi43 : あ!太陽の国…隣の黄金国【ゴールデンランド】?
re20 : え、ええ、この国は果実が有名だから、リンゴを買いに…
mi44 : え…
re21 : あの、どうかしましたか…?
mi45 : あ、えっと…実は…さっき、リンゴ、他の人が大量に買っちゃって、残ってたリンゴも全部私が買っちゃったから…えっと、その…
re22 : あー…なるほど…市場にあるリンゴはもう売り切れてる、と。
mi46 : ええ…
re23 : そうですか…困ったな…
mi47 : あ、そうだわ!それじゃあ、これを!
SE 袋を押し付ける音
re24 : え、いや、でも、貴女のが、
mi48 :
良いんですよ、他にも果物買ってるし、リンゴはまた別の日に買うことにします。
せっかく隣の国から来てくれたのに収穫なしじゃ勿体無いもの。
re25 : あ、…ありがとうございます…
mi49 : ふふ、どーいたしまして!
re26 : あ、お金、っ
mi50 : そんな!良いですよ!
re27 : でも、
mi51 : あ、それじゃあ、今度、この道をまっすぐ行った、街の隅にあるパン屋さんに来てください。
re28 : パン屋さん…?
mi52 :
私、そこでパンを焼いて売ってるの。だから、今度、お店に来て、たくさんパン、買って行ってください。
それで十分!
re29 : …分かりました、それでは近いうちに寄らせてもらいますね。
mi53 : ええ、お待ちしてます!それじゃあ、また!
SE 足音
re30 : 元気な人だったなぁ…あ、名前、聞いとけば良かった…
SE 街の雑踏
−馬車の中−
ri12 :
相変わらず…この国は平和ね…それに、この国の人間は皆、綺麗な緑色の髪…
これだけ緑ばかりだと、異国の人間は目立ってしまうわね…
ほら、あそこの青い髪なんか…青…?カイン!カインだわっ!
SE 馬車の扉を開く音
ri13 : カインと会うのは久しぶりねっ!
ri14 : カイ、っ…ン…?
mi54 : カインさーん!ごめんなさい、遅くなっちゃって!
ka32 : ミシェル、果物は買えた?
mi55 : ええ、これで美味しい新作パンを焼くわ!
ka33 : 果物で新作パンかー…美味しそうだなぁ…
mi56 : 出来たら試食してくれる?
ka34 : え、俺が?良いの?
mi57 : ただし、しょーじきに感想言ってよ?
ka35 : まずくても?
mi58 : まずくても!
ka36 : それじゃあ、今からどう感想言おうか考えないと…
mi59 : あ、ちょっと、まずいのなんか焼かないから安心してよ!
ka37 : あはは、期待してるよ。
ri15 : カイン…
SE 足音
re31 : 王女、こんなところで何を…?馬車の中で待っててくださいとあれほど……王女?
ri16 : …また、離れていく…
re32 : 王女…?どうかなさいましたか?
ri17 : …皆、私から…離れて…
re33 : リンアンっ!一体、何が…
ri18 : …レオン、戻るわよ…
re34 : え?でも、もう少し観光する予定じゃ…
ri19 : 良いから…私の国に…戻りましょう…
re35 : …リン…?
SE 馬車を走らせる音
−緑の国・パン屋−
SE 扉を開ける音
mi60 : ただいまー、あれ、良い匂い…今日お休みなのに誰かパン焼いてるのかしら…?ハイクー?モニカさーん?
ha04 : あ、ミシェル、おかえりなさい。
mi61 : ハイク!ただいま!
ha05 : お買い物、出来た?
mi62 : うん、果物買ってきたわ。
ha06 : ふふ、お出かけ、楽しかったみたいね。
mi63 : え?
ha07 : だって、ミシェル、とっても楽しそう。
mi64 : あ、そ、そう?
ha08 : 顔がふにゃってなってるわよ?
mi65 : え!
ha09 : くすくす、うそ。
mi66 : ハイク!!
ha10 : カインさん、だっけ?貿易商さんなのよね?
mi67 :
あ、そうそう、それでね、ハイク。カインさんの国がね、青の国【ブルーアイランド】って言って、島国なんだって!
海に囲まれてる国でね、気候もこの国と似てるんだってさ。
ha11 : 海の見える丘でパン屋さん、っていうミシェルの夢が叶っちゃうわね。
mi68 : ねー。それでね、それでね、一緒に行ってみない?
ha12 : カインさんの国?
mi69 : うん!私もハイクもまだこの国から一回も出たことないし、遊びに行きたいなーって…
ha13 : んー、私はかまわないけれど…モニカさんが…
mo01 : 私がなーに?
mi70 : あ、モニカさん!
mo02 : ふふ、ミシェルにもやっと春が訪れたのねぇ…ちょっと、そのカインさんってどんな人よ?かっこいいの?
ha14 : うん、とっても。
mo03 : あらあら、ミシェルってば意外と面食いだったのね。
mi71 : ハイク!モニカさん!
mo04 : くすくす、今度、このお店改装しようと思うのよ。
mi72 : え?
mo05 :
ほら、売り上げも順調だし、ちょっと大きくしたいな、って。
それで、その改装してる間、お店しめるつもりなんだけど…お休み欲しい人ー!
mi73 : はいはいはーい!
mo06 : 2人で行ってらっしゃい、青の国【ブルーアイランド】。たくさんのことを見て、聞いて、触って、体験するのは良いことよ。
ha15 : モニカさん…
mi74 : モニカさん、大好き!
mo07 : た、だ、し!そのかっこいい貿易商と会わせなさいよ。
mi75 : えー、モニカさんも面食いだからヤダー。
mo08 : 大丈夫、取って食ったりしないわよ。ただ、ほら、好奇心というか…見てみたいというか…
ha16 : くすくす、ミシェル、大変、カインさん、モニカさんに取られちゃうよ?
mi76 : ま、まだ私のでもないもん!
ha17 : まだ、ね?
mi77 : ハイクったら!
−黄金国・城−
ri20 : 緑の国【グリーンビレッジ】を滅ぼしなさい。
re36 : え…
ri21 : 戦を仕掛ければ良いわ。理由なんか適当に作って、全て焼いてしまえば良いのよ。
re37 : 王女…?
ri22 : このリンゴのように…真っ赤に、真っ赤に、全て焼いて…
re38 : 王女っ!
ri23 : 緑の髪を持つ人間は…許さない…私から奪った対価は高いのよ…
−黄金国・レオンの部屋−
(緑の国【グリーンビレッジ】を滅ぼしなさい。)
re39 :
急にどうして…あの時、やっぱり何かあったのか…?
俺が…王女を隣国に誘ったりしたから…どうすれば…どうすれば良い…?
SE リンゴが落ちる音
re40 : …リンゴ…そういえば、このリンゴをくれたあの人も綺麗な緑の髪を…っ、ど、うすれば、良い…っ!
回想((ボクは天秤に掛けました。師匠の命と、師匠の願い。それでボクは、師匠の願いを取ったんです。それがボクの答え。ボクが出した答え。))
re41 : アッシュ…
俺の天秤は…
−緑の国・森−
SE 虫の音
SE 足音
ha18 :
青の国【ブルーアイランド】…この森で暮らしてた時は異国に行くなんて夢のまた夢だったのに…
ミシェルのおかげで……楽しみ、だなぁ……あれ?街の方から何か…
SE 火事
SE 戦の音
SE 悲鳴
ha19 : 街が、燃えてる…?っ、お店…モニカさんっ、ミシェルっ!
re42 :
俺は天秤に掛けた。緑の国【グリーンビレッジ】の命と、王女の願い。そして俺は王女の願いを取った。それが俺の答えだ…
俺が出した答えなんだ。
俺にとって王女は唯一無二の存在。
サリーを亡くし、ガクトさんとルナさんを亡くした今、俺に残ってる俺の味方は王女ただ一人…
それは王女も同じ。王女にとって唯一無二の味方は俺だけ。
それなら、答えは決まってる。
傾く天秤の結果なんか見なくても分かる。
俺は、王女を取ったんだ。
王女のためなら…たとえ、この戦が悪の所業と言われたとしても、俺は、王女のためなら悪にだってなってやる。
mi78 : きゃぁああああぁあっ!
ha20 : ミシェルーっ!!
END